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お知らせ

感染者は2000万人?! 〜結核から自分と家族を守る

 結核を「昔の病気」と思っていませんか? 実は現在でも、日本で結核菌に感染している人は約2000万人と推定されています。さらに、結核は毎年15000人を超える新たな患者を生んでいます。世界全体でみても、結核はエイズやマラリアと並ぶ三大感染症の一つで、約20億人が感染していると推定される現在進行形の病気です。結核に詳しい国立国際医療研究センター呼吸器内科の高崎仁先生に、結核の現状と対処法などについてお聞きしました。


1. いまだ「低まん延国」になれない日本の現状とは

 日本では、1950年代まで結核は「国民病」「亡国病」と呼ばれ、毎年5060万人が発病し、死亡原因第1位の怖い病気でした。しかし、薬や医療技術の進歩、公衆衛生や生活水準の向上によって患者数は年々減少し、2014年には新規患者数が19615人と初めて2万人を下回りました。結核罹患率(人口10万人当たりの年間発病者数)は、20年前の1998年は32.4でしたが、2017年に13.318年に12.3と大きく下がっています。それでも日本は罹患率が10以下の「低まん延国」である欧米諸国、例えば米国2.8、オーストラリア6.6、英国8.3(いずれも18年)などと比較するとまだまだ高い「中まん延国」です。


 日本の結核の特徴は高齢者の発病が多いことで、新規患者の約60%を70歳以上が占めています。これは結核がまん延していた1950年前後に感染した人が、加齢や他の病気にかかり、免疫力が低下し発病したと考えられます。最近では、外国生まれの患者の増加も目立ちます。2018年の新規患者のうち、外国生まれの患者は10.7%と初めて1割を超え、特に20歳代では全体の70.4%を占めています。来日する労働者や留学生など長期滞在者の増加に加え、今年は東京五輪・パラリンピックが開催されるため、旅行者などの短期滞在者の結核にも注意が必要です。


2. せきが2週間以上続いたらすぐに受診を!

 結核は、患者のせきやくしゃみのしぶきに含まれた結核菌が空気中を飛散し、これを吸い込むことで感染する飛沫核感染(空気感染)によって広がります。結核には「感染」と「発病」の2つのステージがあります。口から入った結核菌が気管を通り、肺に侵入して定着するのが感染。その後、数カ月から数十年の間に症状が出始めると発病となります。多くの人は感染しても免疫機能が発病を抑え込むため、実際に発病するのは感染者の10%ほどです。これまでのデータから56%の人が感染から2年ほどの間に発病し、残りの45%の人が高齢になってから発病すると考えられています。


 結核を発病してもごく初期は症状がないケースが多いですが、徐々に微熱やせき、たん、全身のだるさ、寝汗、体重減少などの症状が出てきます。「風邪が長引いている」と感じていても、症状がインフルエンザのように激しくないために判断が難しく、発見が遅れがちになります。早期発見のポイントは次の2つです。このような症状があれば、すぐに医療機関の受診が必要です。

 ⬛せきが2週間以上続いている(たんの有無にかかわらず)

 ⬛微熱、体のだるさが2週間以上続いている


3. 結核はきちんと治療すれば完治が可能

 感染や発病から身を守るには、免疫力を下げないこと。「十分な睡眠」「バランスのとれた食事」「適度な運動」「禁煙」などを意識して生活することが大切です。また、糖尿病やエイズ感染、透析治療、胃の切除、抗がん剤やステロイド薬の服用などは感染後の発病の危険度を高めます。結核は空気感染しますので、換気の良くない密閉空間や不特定多数の人が長期滞在する場所、例えばカラオケ店、インターネットカフェ、大都市の深夜営業レストランなどは注意が必要です。気になる場所では、「マスクをする」「深呼吸はしない」ことなどを意識しましょう。乳幼児には、結核のワクチンであるBCG接種が有効です。


 結核の早期発見には、定期的な胸部エックス線検査が重要です。せきや微熱、体のだるさが2週間以上続く場合には、すぐに医師の診察を受けてください。もし発病が確認されても、医師の指示に従い結核治療薬を69カ月ほど服用すれば、ほとんどの場合完治します。ただし、結核性髄膜炎にかかるなど、重篤になると死に至ることもあります。

324日は「世界結核デー」。今年のテーマは「結核流行の終息のために団結しよう!」です。世界全体ではいまだ猛威をふるっているため、私たちも、結核を過去の病気と思い込まず、その現状や治療の正確な知識を得る必要があります。


*健保組合連合会発行「すこやか健保」2020年3月号掲載 <すこやか特集>より

*監修:高崎 仁(国立研究開発法人 国立国際医療研究センター呼吸器内科/国際感染症センター医師)

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