中部日本放送健康保険組合

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お知らせ

2018年度診療報酬改定 〜 軌道修正される医療の姿


この4月、医療機関で支払う医療費(=診療報酬)が改定されました。
検査や注射や手術など個々の価格が見直され、全体として0.55%の値上げとなりました。
医療が公的保険で運営されているわが国では、診療報酬改定が患者負担や医療提供のありように大きな影響を及ぼします。
何が、どう変わるのでしょうか―?


1. 目指すは「自宅」で医療・介護を受けられる体制

 わが国の保険診療は、個々の医療行為について、必要となる設備、人員体制や価格が全国一律で定められています。これらは2年に1回、物価や賃金の変動を反映させるという名目で見直されます(2018年度はその改定の年)。
 価格の改定は医業経営の収支に直接影響するので、事実上、医療機関を一定の方向へと“統率”するための、国の政策実行手段として用いられます。そして今回、国が掲げた改定のテーマの1つは、「どこに住んでいても適切な医療・介護を安心して受けられる社会の実現」。これは要するに、高齢期に医療や介護を受ける場所を、病院や介護施設から「自宅」に切り換えていくという意味です。
 世界で最も高齢化が進んでいるわが国では、寝たきりや認知症となる人が今後も間違いなく増えます。そのなかで、誰しも必要な医療・介護を受けられる仕組みを、現役世代が支えきれる範囲で築かねばなりません。そのためには、病院や施設などの“ハコもの”を増やすよりも、場所を選ばず小回りの利く在宅医療/在宅介護のほうが、限られた財源や人材をうまく配分できる。そういう狙いで、既存のハコものを絞り込んで、地域で完結するサービス体制(地域包括ケアシステム)を確立するためのルール変更や価格改定が行われたのです。


2. 急性期病院のスリム化と、在宅医療の参入拡大

 何がどう変わったかをざっと見ていきましょう。
 まずはハコものの絞り込みです。地域包括ケアシステムは、救急や専門性の高い治療は十分な設備や人員を備えた病院で行い(@)、その後はできるだけ速やかに在宅医療・介護につなげたり(A)、リハビリ専門の病院に転院して機能訓練を行う(B)―という流れ・役割分担がポイントとなります。この@ABの機能が、全国的にバランスよく配分されるように、病院や診療所に支払われる医療費を、ある条件のもとでは引き上げ、ある条件のもとでは引き下げる見直しが行われました(これを受けて病院や診療所が、新たに参入したり撤退したりするわけです)。
 たとえば、重い患者をそれほど受け入れていない病院で、しかし手厚い人員体制を敷いてコストがかかっている急性期病院について、実際に必要な程度に体制のスリム化が進むように、入院料の支払いのあり方が見直されました。一方で、在宅医療に取り組む診療所がもっと増えるように、一番のハードルとなっていた24時間対応のルールが改められました。他の病院・診療所との連携で条件をクリアする方式を認めて、ハードルを下げたのです。


3. 「高度な医療」は大病院「日常的な医療」は診療所

 また、大病院は高度な医療に徹し、それ以外の日常的な医療は診療所が「かかりつけ医」となって一手に受け持つように、役割分担が加速します。
 たとえば、紹介状なしで大病院を受診した患者は、これまでも初診時に「5,000円以上の病院が決めた額」を追加負担しなければなりませんでしたが、その追加負担を取る病院が今年度から1.6倍に増えます(現在262カ所→410カ所程度)。従来は基準が「ベッド数500床以上」であったのが、「400床以上」へと改められたのです。何年か先には基準の見直しで対象がさらに増えるかもしれません。
 その一方で、「かかりつけ医機能」を果たす診療所に、より多くの医療費が支払われることになりました。具体的には、服用している薬や他院への受診状況を患者ごとに把握したり、24時間の相談受付体制をとったり、必要に応じて専門医につなげる役割をこなす医師は、初診の患者1人につき800円(窓口負担は240円※3割負担の場合)の追加収入を受け取るようになります。患者には負担増です。
 さて、以上のような診療報酬の原資は、被保険者と事業主が納める保険料です。改定を通じて真に合理的かつ効率的・効果的な配分となったかについては、今後保険料を負担する私たちでしっかり検証していく必要があります。

<すこやか健保2018年4月号より/無断転載を禁ず>